07. 今も昔も遠い未来もすぐ側に

date : 2009/4/16
 ジャンル:ミハクラ




今も昔も遠い未来もすぐ側に



目が覚めると真白の世界だった。
上を見上げると真白い天井、四方には真白いカーテン、
周囲を纏う空気はうっすらと消毒液の匂いがした。
汚れひとつない純白のシーツと掛け布団、枕。
私はうっすら目をあけて瞬きをして、もう一度目をとじた。

そういえば、ここは病院だったな、と寝惚けた思考でぼんやりと思った。
私は入院していたのだ。もうこの部屋の、このベッドに眠るようになって3日も経ったというのに。現実味が湧かないような、ずっと醒めない夢を見ているような心地がするのはどうしてなのだろう。


クイーンバジュラ、基、その背景で糸を引いていたギャラクシー船団との交戦の後、フロンティア船団はバジュラの惑星へと降りたった。そこは美しい惑星だった。おそらく、フロンティア政府は、この惑星を我々の新しい永住の地とするだろう。現在、グラス大統領の死、そしてレオン三島新大統領の失脚によって、内部は大荒れであろうが。だがきっと、これから私たちは、この地で新しい未来を築いてゆくのだ。ここは、銀河漂流時代、誰もが夢見た希望のフロンティアなのだから。

私がこの軍の医療機関に入院しているのは、もちろん戦闘によって負った傷の治療の為、というのもあったが、検査の為でもあった。交戦に関わった軍の者、及びSMS隊員たちも、つい先日まで検査の為に入院していた。だが崩壊した街並みの復興、船民の救助や支援、そして未知の惑星の探索など、軍人に課せられた任務は多い。彼らは早々に検査を済ませ、次々に退院してしまった。おそらくオズマやアルト達は今頃各地へと駆り出されているのだろう。だが、ゼントラーディである私は、通常、一般のマイクローンが受ける検査に加えて、ゼントラ化したままの状態での検査も必須であった。なので他の隊員よりも時間がかかってしまっているのである。遺伝子が不器用である私は特に、だ。

私の入院している棟の向かいの建物にシェリルとランカがいた。シェリルは通常の検査に加え、V型感染症ウイルスの検査も行ったが、特に異常は見受けられず、信じがたいことに、ほぼ完治しているようだった。

「だから言ってるでしょ!?治ったのよ!」

私を誰だと思ってるの。と、シェリルはいつものような強気な態度で医者に喰ってかかっていたが、後々、こっそり私のところを訪ねて来、

「不思議な体験をしたのよ。ランカちゃんと、アルトと。」

と、ぽつりと洩らした。シェリルに何が起こったのかはわからない。だが、私は安心して肩を撫で下ろした。ランカの体調もすこぶる良好らしく、退院後は新曲のリリースも決定しているそうだ。蒼のエーテル、静かで、少し淋しい曲だった。思わず涙が出た。



目を開けて、まっすぐと天井を見据えた。
真上に腕を伸ばし、拳を握る。

あの時のこと、あの時のことばをまだ鮮明に覚えてる。
ミシェルが守ってくれた
ミシェルがくれた愛の言葉を。

『愛してる。』

ああ、私もお前のことを。ミシェル。

寝返りを打って私のベッドの左横を向く。
四方を白い布で覆われているため、何も見えない。








「…ミシェル。」
「クラン?起きてたのか。」
「今目が覚めたんだ。」
「さっき、アルト達が来てたぞ。みんな、元気そうだったな。」
「お前は自分の心配をしていろ…まったく」

カーテンは閉まったままだ。ミシェルの顔は見えなかった。だが、私にとっては好都合だ。


「ミシェル。」
「なに?」


「あいしてる」



―――――ずっと昔から、今も、そしてこれからも、

私は何やら急に恥ずかしくなって布団を頭までかぶって眠ったふりをした。
そんなもの、なんの誤魔化しにもならないと、わかっていたのに。



「おれも」




ミシェルが少し照れたように、でもはっきりと私に言った。
涙が溢れた。何か言って返そうにも、声がふるえてしまう。
絞りだそうとした声は、嗚咽へと変わってしまった。


カーテンがあってよかった。私の情けない顔は、ミシェルには見えない。
カーテンがなければよかった。ミシェルの顔を見ることができない。


でも、きっときみは笑ってるんだろう。
私の大好きな、こんじきの太陽のような笑顔で。


ずっと昔から、今も、そしてこれからも






あとがき

い  み  ふ  め  い  ^^

これがラストでいいのでしょうか?
SSSに憧れ、ノリノリで書いていたのに
結局いつもとおんなじかぁ。
でも初めての一人称です。
最終回のあと、こうなってほしい、というあたしの願いです。
永住とかSMSのこととか、全部捏造。
きっと、ミシェルの存在も。
でも愛してる、ミハクラ!!幸せになってね!!


お題提供元:恋したくなるお題(ひなた様)

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