「…ねぇ、」
「なんだよ。」
「なんで怒ってるのよ?」
「怒ってなんかないよ。」
「嘘。機嫌悪いじゃない。」
「別に。」

バサラとミレーヌは、アキコの事務所へ向かう為、最寄駅で待ち合わせをしていた。
しかし、約束の時間になってもバサラは一向に現れなかった。
痺れを切らして一人で事務所へ向かおうとしたミレーヌは、そこで見知らぬ男達に絡まれてしまったのだ。
間一髪のところでバサラが現れ、男たちはすごすごと退散したのだが、何故かバサラの機嫌は頗る悪かった。
強引にミレーヌに手を取り、歩き出す。

「バサラっ。」
「何?」
「手、離して。」
「お前がフラフラしてるのが悪いんだろ。」
「だぁかぁら!約束の時間に遅れて来たバサラが悪いんでしょぉ!?」

己の遅刻を棚に上げミレーヌを責めるバサラに、ミレーヌは怒って吠えかかる。
しかし、ふとある疑問が頭を過り、ん、と彼女は首をかしげた。


バサラはどうして怒っているのだろうか。
また面倒を掛けてしまったから?
どうしてそのことに対して臍を曲げているのだろうか。
彼が不機嫌なのは、どうして。



「ねぇ、」
「なんだよ。」
「それって、もしかして。」
「なんだよ。」
「…ううん、なんでもなーい。」


ミレーヌは俯いて、ふふ、と小さく笑う。
バサラは、変なヤツ、と言ったきり何も言ってはこなかった。



ねぇ、バサラ。それって、焼きもちじゃない?






無自覚なバサラです。
ちょっと長いver.のSSもお題にUPしておきます。